「ウーナ」の物語。弱者の戦略という視点で、描かれたストーリーです。
虎翼塾に参加されているクリエイターの協力を得て作りました。
虎翼塾には業種・業界を越えてたくさんのクリエイターの皆様が参加されています。
こうした「戦略を表現する場」を活用して、全国のクリエイターが交流することを願っています。
霧の奥に浮かぶ深い森。果実の森。人々はそう呼んでいた。
長い冬の時代が訪れた荒廃した土地では、
強者はさらに強くなり、弱者はさらに弱くなる。
力を持つ「狩り人」だけが潤沢な果物と生活、そして権力を手にしていた。
強者には特別な「しるし」が与えられ、
その「しるし」は強者の証として村での尊敬と畏怖の対象となっていた。
ウーナは物心ついた頃から、そんな厳しい世界をずっと見て育った。
成人になった日、ウーナは狩り人になるべく細い短剣を持ち、ひとり村を出た。
狩り人には相応の覚悟と力が必要である。
森は暗く深く、二度と戻らぬものも多い。
それでも彼女の意思は揺らぐことはなかった。
ウーナは風の匂いの中に甘い香りを嗅ぎ取った。
香りを辿って茂みを抜けると、
そこには大木のように大きな黒い男が
大きな果実を守っている。
狩り人皆に恐れられ、常に恐ろしい噂の絶えない男で、
不思議な武器で簡単に他の狩り人を「狩る」という。
狩り人にとって一番の危険は、狩り人同士の争いなのだ。
ウーナには到底太刀打ちできない。相手が悪すぎる。
浅い開けた森には、強力な敵が縄張りを張っている。
さらに森の奥へ行かなければ。
森の泉に辿り着くと、果実のようなものが見えた。
ウーナは「泉の果実」を手に入れた。
村へ引き返そうとしたウーナの前に現れたのは
集団の狩り人、小さき者たち。
主に集団をなし、団体で行動するものの、
採ったものを集団の中で取り合う小者たちだ。
一瞬の間ののち、恐ろしく素早い動きでこちらへ近づいてくる。
ただ一人だけ、
様子の違う小さき者がいるようだ。
敵か味方か?
ウーナは一目散に走った。
無我夢中で走り、もっともっと森の奥へ進むしか手はない。
背後には叫びながら追いかけてくる音が聞こえる。
森は奥へ行くにつれ、どんどん危険になっていく。
村からは離れ、徐々に他の狩り人の気配もなくなってゆく。
森の果てにつくころ、前方に一本の木を見つけた。
周囲をぐるりと見渡す。
彼女は近くに落ちていたしなりのある木の枝を拾うと、
短剣を抜き、その剣で小さな弓をつくる。
昔、今はもういない狩り人が戯れに小さなウーナに教えたのだった。
ウーナはしなりを確かめると、
弓に矢をつがえゆっくりと引き絞り、
小さく息を止めた。
森の果ての果実を手にしたウーナは
村への帰路につく。
けもの道の脇を用心しながら歩いていると、
ぐったりと倒れ込む小さな姿が見えた。
はぐれた「小さき者」だった。
ウーナを逃がした腹いせに、
果実を奪われ居場所を無くしていた。
単独行動に向かない種族は、森の中で死への道を辿るしかない。
ウーナは黙ったまま、小さき者を後にする…
PRODUCER/石原鉄也(テル株式会社)、武友淳(維新エンターテインメント株式会社)・DIRECTOR/久保田 達也(MISTO) ASSISTANT DIRECTOR/田中邦彦(アクオデザイン)、三枝暁子(JITTADESIGN)・EDITOR/釘松靖幸(プチグラフィックス) DIRECTOR of PHOTOGRAPHER/佐野克典(clover)・PHOTOGRAPHER/橘薫 PRODUCTION DIRECTOR/市川 明(株式会社ブランキューブ)・PRODUCTION DESIGNER/飯島 武士(株式会社東宝映像美術) CAST/ウーナ:山村知世、森の大王:和田健一郎(和田デザイン事務所)、小さき者:狩野琴絵(東京モノノケ)、谷村 弘貴(フロムフラットデザイン)